認知症について
認知症
認知症は、獲得された機能が、脳の障害により、広範に障害され低下した状態です。
中核症状は複数の認知機能障害で、知的障害だけでなく人格、感情、行動に影響が及び、BPSDと呼ばれる行動、心理症状(周辺症状)を伴います。多くは進行性ないし固定性の経過を取ります。
中核症状:記憶障害、失見当識、判断力、問題解決能力の低下など
周辺症状(BPSD):自発性低下、抑うつ、情動不安定、不穏、徘徊、妄想など
治療:治療薬はありますが、おおむね対症療法と言わざるを得ません。いずれも老化という避けられない生理的変化に基づく状態ですので、心理的サポートや生活環境の整備、リハビリテーションなどを組み合わせ、不安なく生活できるようサポートすることが最良の治療です。
●アルツハイマー型認知症(AD):記憶障害が気分、行動、性格の変化より強い。
大多数のADは遺伝性ではありませんが、強力なADリスク遺伝子として,アポリポ蛋白E4があります。アポE4 アレルを1つ有する方で4倍、2本有する方で10倍ほど高い発症リスクが示されています。
若いときに頭部外傷を受けた方は、高齢になってADを発症するリスクが高くなります。また、短い教育歴もADのリスクとなることが知られています。食物、運動、脳の活性化、生活スタイルなどについても多くのリスク要因が報告されています。
治療 アセチルコリン系の活動が低下していることから、アセチルコリン系を賦活する薬剤が主流です。しかし、薬剤はある意味対症療法であり、投薬を続けても長期的には認知症は進行していきます。
●レビー小体型認知症:認知症患者の20%を占めます
認知機能の変動、幻視、パーキンソン症状が特徴ですが、初期には認知症は目立たず妄想や抑うつなどの精神症状が主体となりやすいです。脳の萎縮が目立ちませんが、SPECTやMIBG心筋シンチが診断に役立つことがあります。ADの治療薬やパーキンソン病のお薬などを使用します。
●血管性認知症(VD):脳血管障害から起こる認知症です
最初の脳卒中から認知症を呈することはまれで、徐々に脳病変が進行していきます。高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管障害の既往などが危険因子です。意欲減退や失語症、片麻痺、尿失禁、パーキンソン症状など神経学的症候を呈するのが特徴です。
治療に関しては、生活習慣病の予防と同様に、食事、運動、肥満予防、飲酒、喫煙抑制、ストレス緩和など予防的治療が大事です
●前頭側頭型認知症:気分、行動、性格変化が知的低下より強い
前頭葉と側頭葉前方部の病変を特徴とする認知症です。脳の前方部の病変により、脳の後方部、辺縁系、基底核の抑制が外れ、反射的、短絡的、無反省、常同的な行動へと変化します。結果として本能のおもむくままの行動は問題行動を引き起こし、怒りも抑制できないため、問題行動を抑制されると易怒的となるなど、困難を生ずることが多々あります。